週刊ベイスポ4月14日発行号掲載

今週の人:ミュージシャン
喜多郎 (きたろう) さん

 日本が誇る世界的ミュージシャン・喜多郎さん。昨年夏よりコロラドから拠点をベイエリアに移している。2月には、キーボディストで妻のKeikoさんとの初コラボレーションで待望のニューアルバム「スピリチュアル・ガーデン」をリリースし、今年、100周年を迎えるサンフランシスコ日本町の節目となる北加桜祭りでは、グランドマーシャルを務めることになった。そんなベイエリア日系社会にも元気を与えてくれる喜多郎さんに話を伺った。
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●現在の活動について

 今回のアルバム「スピリチュアル・ガーデン」は、舞踏家の玉野さんの映像を見て、Keikoさんと一緒に曲を作ってみようと思いました。今までも踊りのために曲を作ったことはあるんですけど、普段は自分ひとりで作っていきますから、今回のように玉野さんの踊りを見たのがきっかけになるというのは、今までにはあまりなかったですね。
 それから、「空海の旅」は2001年の911(同時多発テロ)を境に始めたプロジェクトなのですが、鐘の音を録るのに四国八十八箇所を巡っていて、今のところ58番まできました。あと30番ありますね。この前も日本へ行ってきたのですが、1週間しか滞在できなかったので5箇所しか巡れませんでした。あと鐘の音を録るだけでも6年くらいかかるんじゃないかな。そう考えると、完成までには、あと10年はかかる長期プロジェクトですね。今までにも「シルクロード」が6年の歳月をかけましたけど、それ以上になりますね。もうライフワークみたいなものですよ。

●映画にも初出演されましたね?

 地元の愛知県豊橋市が市制100周年ということで、映画「早咲きの花」のテーマ曲の話がありまして、お受けしたら、監督さんから「花火師の役でセリフもないし花火をあげるだけなので、出演してみませんか」と言われましてね、花火をあげるだけならいいかと思って、撮影現場に行ってみたら、その場でどんどんシーンが増えて、セリフも追加されていきました(笑)。

●今後の活動予定

 つい先日決まったんですけど、日本のソサエティーを盛り上げなきゃなんて、太鼓道場の田中さんや舞踏家の玉野さんとも話をしていて、桜祭りでグランドマーシャルを務めさせてもらうことになりました。
 7月の後半からは日本でツアーが始まります。日本ツアーの後には、続けて東南アジア、ヨーロッパを回る予定です。今回、東南アジアでは、バリ島に行こうと思っています。

●世界中をツアーで回られて、それぞれの土地で反応は違いますか?

 全然違いますね。南米なんかはとてもノリがいいですよ。ブラジルだと、コンサートが始まるのは夜10時くらいからなのに、8時くらいから会場には人が集まって飲んでいるので、お客さんはもう出来上がっちゃってる(笑)。地域ごとにノリが全然違うので、照明の具合を変えたり、いろいろとアレンジします。でも、会場に入るまでわからないですから、その時々で突然、段取りを変えてしまいます。メンバーは「えっ?」て感じですよ。

●ミュージシャンを目指したきっかけ

 僕には「人生を変えた日」というのがあるんですよ。音楽をやっていたから、就職も楽器屋さんに決まっていたんですけど、あまり行きたくなくて、親が入社式の日に会社の前まで送ってきてくれました。でもやっぱり行きたくないなと思って、帰ってしまったことがありました(笑)。もしそこで、入社式に行っていたら人生変わっていたかもしれないじゃないですか。だから僕にとって、その日は「人生を変えた日」なんです。

●子供の頃なりたいと思った職業

 テニス選手になりたかったですね。

●英語を使うということ

 アメリカに来た当初は、メンバーはみんなこっちの人で、どうやったら通じるだろうと考えたんですよ。結局、それぞれのパートの演奏を実際にしてみせて、こうやるんだよと伝えましたね。それから、以前、アメリカ人から電話インタビューを受けたときに、1回だけ通訳を付けてもらったんですけど、電話インタビューは難しいですね。でも僕は、あまり英語をパーフェクトにしゃべりたくないですね。言いたいことだけ言えれば、わからないところはわからないほうがいいかなと思います(笑)。

●英語で失敗したエピソード

 何かを尋ねたりするときに、「owe」という単語をよく使っていたんですけど、その単語は、ニュアンスが強いからあまり使わないほうがいいよとアドバイスを受けたことがあります。

●ベイエリアの印象

 16年住んでいたコロラドから、去年の夏にセバストポールに引っ越してきました。カリフォルニアって、こんなに雨がよく降るところだったかなあと思いましたね。(笑)僕は、コロラドでも標高3000メートルくらいのところに住んでいたので、冬仕様というかね、涼しいほうがいいので、カリフォルニアでもノースベイのほうがいいなあと思いました。

●現在、住んでいる家

 3ベッドルーム2バスです。偶然なんですけど、友達の絵描きさんの生徒さんの家だったんですよ。コロラドでは高地の為、できなかったんですが、庭で野菜などを栽培しています。

●起床時間・就寝時間・睡眠時間

 朝は8時前には起きますね。結構、朝人間なんですよ。若いときは、1曲作るのにノンストップで2、3日寝ないなんてこともありましたけど、今、そういうことはないですね。

●休日の過ごし方

 休日って、ほとんどないけど、ベイに行ったり、サンフランシスコに出てきたりするかな。ワイナリーも行きますよ。夫婦で出かけるんですけど、私が運転手でね(笑)。

●好きな場所

 コロラドのロッキー山脈。山が好きなんですよ。日本でも長野の山のほうに住んでいましたしね。でも、今回初めて海に近いところで人里にも近いというのは、変わった部分です。音楽も変わってくるかもしれないなあ(笑)。

●お気に入りのレストラン

 ナパ近郊のYountvilleにあるビストロが料理もワインも美味しかったですね。

●よく利用する日本食レストラン

 玉野さんの「カントリーステーション」かな。日本へ行くときに、出発の前日にお店の近くに泊まって行くんですよ。そして、翌朝、空港へ行くというパターンね。玉野さんが、どんどん料理を出してくれるから、オーダーしたことがないですねえ(笑)。

●1億円当たったとして、その使い道

 うちにスタジオを建てるかな。今も小さいのはあるんですけど、僕の中で理想のスタジオというのがあるので、その理想に近いようなものですかね。

●日本へ戻る頻度

 年に3回くらいですかね。7月からの日本ツアーでは、中高生の太鼓グループにも参加してもらうので、その生徒たちを指導しに今度、日本へ行きますよ。

●最近、日本に戻って驚いたこと

 あまり明るい話題がないじゃないですか。議員さんのメール問題とかね。最近の日本は、ハンバーガーがまかり通っているというか、ウェスタンナイズされた考え方になってきていると思うので、もっと大和魂っていうのかな、日本人らしく生きてほしいですね。

●日本に持っていくお土産

 今は何も持っていかないですね。

●ベイエリアに持ってくるもの

 ベイエリアに来てからは何でも揃いますからね、ほとんど何も持ってこないですよ。コロラドに住んでいた頃には、日本から味噌や塩まで持ってきていましたけどね。

●日本に郷愁を感じるとき

 日本の良い時期ってあるじゃないですか。春とか、食べ物が美味しい時期とかね。そういう良い時期に日本に帰りたいなあと思いますね。

●永住したい都市

 カリフォルニアは良いですよね。あと、友達が住んでいるスペインのカダケスという町があって、そこの海が良いんですよ。画家のサルバドール・ダリが晩年住んでいた町なんですよ。

●ベイエリアに住み日本人のみなさんへメッセージをお願いします

 今年、サンフランシスコ日本町が100年ということで、もう一度自分たちの歴史を振り返って、日本人としての誇りを再確認して欲しいですね。世界を平和にしていくのに、日本人としての役割というのがあると思うんですよ。でも、それがテロ対策だったり、違う方向に進んでいる気がします。もう少し平和に盛り上がって欲しいですね。そして、もっともっと日本人が、アメリカの人からも世界の人からも尊敬されるようになることを願っています。

■プロフィール■
喜多郎
きたろう
 愛知県豊橋市出身。1986年、「天空」でアメリカデビュー。1987年には「ザ・ライト・オブ・ザ・スピリット」で初のグラミー賞にノミネートされる。1993年、オリバーストーン監督の映画「天と地」の音楽を担当しゴールデン・グローブ賞ベスト・オリジナル・スコア部門を受賞。2001年の同時多発テロを機に平和をテーマにした「空海の旅」の制作を始める。2006年2月には、最新アルバム「スピリチュアル・ガーデン」をリリース。妻でキーボード奏者のKeikoとの初コラボレーションを実現している。

今年2月にニューリリースされたアルバム「Spritual Garden」

キーボディストで奥様のKeikoさんと

●最も印象に残っている本

 司馬遼太郎の著書が英語訳された「KUKAI」という本です。アルバム「空海の旅」を作るときに、空海のことをもっと調べようと思って読みました。英語に訳されているとまた捉え方が面白いんですよ。

●印象に残っている映画

 オリバーストーン監督の「天と地」ですね。僕は音楽を担当したんですけど、フィルムクルーとベトナムの舞台になった町へ行ったら、共産主義の人たちが拳銃を所持していてクルーがホールドアップにあったんです。まだ、戦争は終わっていないというのが現実でした。

●よく利用するウェブサイト
 マップクエストとウェザーチャンネル(笑)。サンフランシスコへ出てくるときもマップクエストは運転に役立つし、最近は雨が多いからウェザーチャンネルもよく見ますよ。

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